ビジネスと社会 / PROCUREMENT
コンペの3社が、
同じ画材を提案していた
文:フェイスペイントジャーナル編集部
要旨 ラグビーワールドカップ2019日本大会の公式フェイスペイントブースは、コンペで運営会社が選ばれた。ところが応募した3社の提案は、いずれも同じ画材・同じパートナーを前提にしていた。法令が選択肢を絞り、見積もりまで揃ったとき、勝敗を分けるのは価格ではなく提案の中身になる。
何が起きていたのか
本誌のケーススタディ「応援するしくみ」をレガシー化するで取り上げた、3会場・全8試合で12,211人に描いた公式フェイスペイントブース。その運営会社は、コンペで選ばれました。エントリーしたのは次の3社です。
| 大手広告代理店 A社 | ミラクルペイントを前提とした提案 |
|---|---|
| 中堅広告代理店 B社 | ミラクルペイントを前提とした提案 |
| イベント会社 C社 | ミラクルペイントを前提とした提案 → 受注 |
社名は伏せています。画材の供給、ペインターの育成、オペレーションの設計はミラクルペイントが担当しました。
なぜ、全社が同じ提案になったのか
不特定多数の顔に描くフェイスペイントは、運営のしかたによっては美容師法の対象になります(くわしくはこちら)。数千人規模の来場者に、法令に沿ったかたちで、しかも短時間で提供する。この条件を満たす画材と運営の仕組みを持つ事業者は限られ、当時の選択肢は事実上ひとつに絞られていました。
つまりこのコンペは、「どの画材を使うか」ではなく、「同じ画材をどう使うか」を競う場になっていたことになります。
見積もりが同じとき、何で選ばれるのか
ミラクルペイントが3社に提示した見積もりは、同額でした。原価が揃っている以上、価格で差はつきません。勝敗を分けたのは、同じ素材をどんな体験として組み立て、どう運営するかという提案の中身だったと考えられます。
Insight
素材と価格が揃うと、競争は「企画力」と「運営力」だけの勝負に純化される。
供給する側から見た構図
ゴールドラッシュで最も確実に利益を得たのは、金を掘った人ではなく、ツルハシを売った人だった、とよく言われます。法令という条件が選択肢を絞ると、どの会社が勝っても採用される「供給する側」のポジションが生まれます。
このとき、全社に同じ条件を出すことには意味があります。特定の1社に肩入れしないことが、発注者に対する公正さの担保になり、次の案件でも全社から声がかかる理由になるからです。
転用するなら
- 発注する側:法令の対象になりうるコンテンツは、企画を組む前に「だれなら実施できるか」を確認しているか
- 提案する側:素材が同じとき、差は使い方の設計でつく。1人あたりの秒数、動線、体験の物語まで提案に含めているか
- 供給する側:全社に同じ条件を出すことが、長期的な信頼につながっているか
※関係の開示:本誌は株式会社POOLが運営しています。ミラクルペイントは同社の製品です。
