ビジネスと社会 / LAW & RISK
ハロウィンのフェイスペイント、
事故のとき誰が責任を負うのか
文:フェイスペイントジャーナル編集部
要旨 10月になると、商業施設やイベント会場で「無料フェイスペイント」をよく見かけるようになります。しかし、顔に描くフェイスペイントは、運営のしかたによっては美容師法の対象になります。このことを知らないまま企画している商業施設、イベント会社、専門学校は、まだまだ多いのが実情です。いちばんの懸念は、肌のトラブルなどの事故が起きたときに、誰が責任を負うのかが決まっていないことです。
毎年10月に増える「無料フェイスペイント」
ハロウィンは、フェイスペイントがいちばん求められる季節です。ショッピングモールの集客イベント、テーマパークや飲食店の期間限定企画、地域のハロウィンパレード。来場者の顔にかぼちゃやコウモリを描くブースは、SNSに投稿されやすく、子ども連れも集まるため、企画担当者にとって魅力的なコンテンツです。
一方で、現場では次のような運営もよく見かけます。
- 施設やイベント会社のスタッフが、市販のメイク用品や絵の具で来場者の顔に描く
- 美容専門学校の学生が、実習の一環やボランティアとして来場者に描く
- 筆を洗う水を交換しないまま、何十人もの子どもに続けて描く
どれも善意から始まっていることが多く、悪気はありません。ただ、法令と安全の面から見ると、見過ごせない問題を含んでいます。
フェイスペイントと美容師法の関係
美容師法は、「美容」を「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」と定めています(第2条)。そのうえで、美容師でなければ美容を業としてはならず(第6条)、美容師は原則として美容所以外の場所で美容の業をしてはならない(第7条)としています。違反した場合は30万円以下の罰金の対象です(第18条)。
顔に描くフェイスペイントは、この「化粧等の方法により、容姿を美しくすること」にあたる場合があります。厚生省(当時)の通知では、美容師法の美容は通常「首から上」の容姿を美しくするものとされています。顔に、不特定多数の人へ描く。ハロウィンのフェイスペイントブースは、まさにこの条件にあてはまりやすい運営です。
見落とされやすいのが「無料だから関係ない」という考え方です。料金を取らなくても、商業施設や企業が集客や販促の目的で行っていれば、「業として」行ったと判断されることがあります。
出典:美容師法(昭和32年法律第163号)、美容師法の疑義について(昭和42年2月16日 環衛第7030号)。条文と解説は日本フェイスペイントイベント協会「法令の基礎」にまとめています。
まだまだ知られていない
編集部には、イベントの企画担当者から「フェイスペイントに資格が要るとは知らなかった」という声が毎年のように届きます。商業施設の販促担当、イベント会社の制作担当、そして学生を派遣する専門学校。いずれも、美容師法との関係を知らないまま企画が進んでいることが少なくありません。
よく聞く説明には、次のようなものがあります。いずれも、法令に沿った運営の根拠にはなりません。
- 「フェイスペイントは美容ではなく、アートです」
- 「民間の協会の認定資格を持っています」
- 「無料のサービスなので問題ありません」
- 「美容専門学校の学生なので大丈夫です」
専門学校の学生が描く場合
とくに注意したいのが、美容専門学校の学生の参加です。学生は技術を学んでいる途中であり、免許を取得するまでは美容師ではありません。施設にとっては「プロの卵」に頼める安心感があり、学校にとっては実践の場になりますが、来場者に業として描く運営は、美容師法の考え方に沿いません。学校の名前で参加する以上、学生個人ではなく、学校の判断も問われることになります。
事故が起きたとき、誰が責任を負うのか
美容師法の目的は「公衆衛生の向上」です。罰則以上に考えておきたいのは、来場者の肌や健康を守れるかどうかです。フェイスペイントで起こりうる事故には、次のようなものがあります。
- 画材や化粧品による、かぶれやアレルギー反応
- 目の近くに描いたときの、画材や筆の接触
- 筆や水の使い回しによる、肌のトラブルや感染への不安
たとえば、ハロウィンのイベントで子どもの顔がかぶれたとします。保護者が責任を問う相手は、描いたスタッフでしょうか。ブースを企画したイベント会社でしょうか。会場を貸した商業施設でしょうか。学生を送り出した学校でしょうか。
法令に沿った運営をしていれば、「どの方法で、誰の責任で運営していたか」を説明できます。しかし、美容師法との関係を確認しないまま運営していた場合は、その説明ができません。責任の所在があいまいなまま、主催者、施設、派遣元、学校のそれぞれが当事者として問われることになりかねません。加入している賠償責任保険が、その運営方法で起きた事故を対象にしているかどうかも、事前に確かめておく必要があります。
企業や自治体が主催するイベントでは、事故そのものに加えて、「法令を確認せずに実施した」ことがコンプライアンスの問題として残ります。楽しいはずのハロウィンが、ブランドの信頼を損なうきっかけになってしまいます。
主催者が事前に確認したいこと
- 描く人は美容師免許を持っているか。持っていない場合、どの方法で法令に沿って運営するのか
- 首から上(顔)に描くのか、首から下(腕や手の甲)に描くのか、参加者が自分で描くのか
- 使う画材は肌用のものか。原材料や注意事項を参加者が確認できるか
- 一人ずつの衛生管理(筆の洗浄、水の交換)ができる運営か。水を使わない画材を選べないか
- 事故が起きたときの連絡先と責任の分担、保険の対象を、主催者・施設・運営者のあいだで決めてあるか
- 運営内容を、開催地を管轄する保健所に確認したか
法令に沿って運営する方法
フェイスペイントをやめる必要はありません。運営のしかたを選べば、法令に沿って楽しめます。
- 美容師による運営:描く人全員が美容師免許を持ち、美容所の届出など必要な手続きをしたうえで運営する
- 画材の体験・説明を目的とする運営:メーカーの美容部員などとして、肌用の専用画材を知ってもらうための体験と説明を行う。料金を受け取る場合は、商品(画材)を手渡す
- 首から下に描く・参加者が自分で描く:腕や手の甲へのペイントや、親子で描き合うワークショップの形にする
対象になるかどうかは、画材ではなく運営のしかたで決まります。どの方法でも、一人ずつの衛生管理は欠かせません。くわしくは日本フェイスペイントイベント協会「法令の基礎」と主催者チェックリストをご覧ください。
編集部の視点
ハロウィンのフェイスペイントの人気は、これからも続くでしょう。だからこそ、「知らなかった」で始めた運営が、事故をきっかけに主催者の責任として問われる前に、仕組みを整えておくことが大切です。法令、衛生、事故のときの責任。この3つを説明できる運営者に任せることが、来場者と自社のブランドを守るいちばんの近道です。
ハロウィンのフェイスペイントを、安心して任せたい方へ
ミラクルペイントは、フェイスペイント専用画材のメーカーとして、企画から当日運営、講習を修了した認定ペインターの派遣までを一括でお受けしています。美容師法の考え方にもとづいた運営方法を選び、運営前の保健所への確認もお手伝いします。水を使わず指でも描ける画材なので、一人ずつ筆や水を替える必要がなく、描いたあとははがして落とせます。
毎年10月には、「開催の3日前に問題がわかった。なんとか対応してもらえないか」というご相談が当社にも寄せられます。ただ、ハロウィンは1年でいちばんの繁忙期で、残念ながらすべてにはお応えできません。ご依頼は、日程が決まった段階でお早めにご相談ください。
※ミラクルペイントは天然ゴム(ラテックス)を原料にしています。ゴム・ラテックスアレルギー、フルーツアレルギー(バナナ、アボカド、キウイ、栗など)のある方は使用できません。
※この記事は、条文と一般的な考え方をまとめたものです。個別のイベントが法令に沿っているかどうかの最終的な判断は、開催地を管轄する保健所にご確認ください。法的な助言が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。
※関係の開示:本誌は株式会社POOLが運営しています。ミラクルペイントは同社の製品で、日本フェイスペイントイベント協会は同社代表が設立した団体です。
転用するなら
- 季節イベントの企画書に、法令と安全の確認欄を入れているか
- 外部に運営を任せるとき、「どの方法で法令に沿うのか」を説明してもらっているか
- 事故が起きたときの責任の分担を、契約や打ち合わせで言葉にしているか