インタビュー / CARE PROFESSIONALS
介護の専門家は、
なぜ「指で描く」に注目したのか
取材・文:フェイスペイントジャーナル編集部
要旨 理学療法士で介護職の人材育成を手がける川﨑初美さんと、認知症ケア指導管理士で地域包括ケアに携わる亀山貢さん。2人はミラクルペイントの認定インストラクター講習を修了し、指で描くレクリエーション「ゆびレク」を現場に勧めています。寄稿をもとに、専門家の視点を整理しました。
川﨑初美さん:作戦会議そのものが、楽しい時間になる
理学療法士・介護支援専門員・福祉用具プランナー。合同会社一歩 代表社員。病院での理学療法、通所介護や社会福祉法人での統括などを経て2015年に独立し、介護職の研修づくりに携わる。2019年1月に認定インストラクター講習を修了。
使ってみてまず驚いたのは、参加者が描きたいアイデアの話で盛り上がり、スマホで調べたり周りからモチーフを探したりと、自分から考える活動が自然に起きたことだといいます。
- 続けられる条件がそろっている:水を使わない、安全性の説明が明確、準備や作業が簡単
- 技術の差を気にしなくていい:筆やペンと違い、指で描くので上手い下手が出にくい
- 描かなくても成り立つ:色を選ぶ、ぬる、はがす、はがした絵の具をつまんで捨てる。そこまでがレクリエーションになる
- 職員研修にも使える:「多世代交流をどうするか」を小グループで考える。交流は「広げるための交流」と「深めるための交流」を分けて企画するのが大切
正解も不正解もなく、はがせるからチャレンジにブレーキがかからない。
亀山貢さん:「脳トレが嫌い」な人にも届く
社会福祉主事・認知症ケア指導管理士・介護支援専門員。生活支援コーディネーターとして地域包括ケアシステムの構築に携わり、地域での認知症講座や介護予防講座を開催。
地域福祉には、住み慣れた地域で暮らし続けるための仕組みづくりと、子どもから高齢者まで誰もが担い手になる世代間交流という2つの課題があると亀山さんは言います。一方で、脳トレを好まない人もいて、無理に勧めるとかえって逆効果になることもあります。
指先を直接使い、何を描くかを考え、お互いに描き合って笑う。遊びの中で頭と体を使う、亀山さんの言う「アソビリテーション」です。赤ちゃんからお年寄りまで、言葉を話せない人ともやりとりができ、施設が課題とする地域との交流の手段にもなるといいます。
編集部の視点
2人に共通するのは、レクリエーションを「させる」ものから「自然に起きる」ものへ変えるという視点です。技術の差をなくす(指で描く)、失敗を怖がらせない(はがせる)、準備の負担をなくす(水を使わない)。参加のハードルを、道具の側で下げています。
転用するなら
- 参加者が「やらされる」のではなく、自然に考え始める設計になっているか
- 技術の差が出にくい方法を選んでいるか
- 交流を「広げる」企画と「深める」企画を分けて考えているか